ゆず肌・・・その原因は?

ある暑い夏の日のことです。
あるお客さんから、電話で問い合わせがありました。

「最近急に塗装の肌が悪くなって、不良率が増えたんだけど、何か塗料に異常があるんじゃないの?」
というものでした。

研磨して再塗装をしているが、改善しないということです。
自動車の部品を製造しているお客さんです。
納期遅れは許されないので早く改善してほしい、という希望でした。

塗装の肌の悪さは、ほとどが塗装方法に原因があることが多いのですが、その電話では即答せず、まずお客さんの工場を訪問して現場を見せてもらうことにしました。


お客さんの工場で現物を確認したところ、そのトラブルは「ゆず肌」という症状でした。

ゆず肌は、別名:オレンジピールともいいますが、塗装の表面がオレンジの皮のような塗り肌になることをいいます。
表面の凹凸が目立って見た目が変わりますし、本来の光沢も出ません。


ゆず肌の原因としては、いくつか考えられますが、一番大きな可能性としては、塗料の粘度が高すぎることと、シンナーの蒸発が早すぎることが考えられます。

塗料は素材の表面に吹き付けられた後、しばらくは液体の状態を保ちますが、その間に平滑になり、その後乾燥・硬化することで、平滑な美しい塗膜になります。

しかし、塗料の粘度が高すぎると、塗料の流動性が少ないため、液体状態の間に完全に平滑にはならず、そのまま乾燥・硬化しますので、ゆず肌になります。
また、シンナーの蒸発が早すぎると、塗料が液体状態を維持する時間が短すぎるため、この場合も完全に平滑にならないまま乾燥・硬化し、ゆず肌になります。


この塗装現場では、塗料をシンナーで希釈したあと、フローカップを使って粘度を測定・調整していたため、塗料の粘度には問題がありませんでした。

しかし、使用しているシンナーに問題がありました。

蒸発の早い冬用シンナーを使っていたのです・・・


(ん? ・・・シンナーにも季節って関係あるの?)

って、思いましたよね?


それが関係あるんです。
シンナーにも旬があるんです!

っというのは冗談で、塗装する現場の温度、より厳密にいうと被塗物(塗装する対象物)の温度によってシンナーを使い分ける必要があります。

温度が高ければシンナーの蒸発が早くなるので、蒸発の遅いシンナーを使い、
温度が低ければシンナーの蒸発が遅くなるので、蒸発の早いシンナーを使う。
このように使い分けるんですね。
だいたい、1つの塗料に、夏用、春秋用、冬用の3種類のシンナーが用意されています。



では、蒸発が早いシンナーと遅いシンナーは、どのように作っているのでしょう?

・・・それは、ブレンドする溶剤の種類・混合比率を変えて作っているんです。


まず言葉の説明をしますが、トルエン、アセトン、といった純度100%の溶剤を単体溶剤、といいます。
そして、その単体溶剤をブレンドして、蒸発速度、塗料への溶解性を調整した塗料の薄め液がシンナーです。

単体溶剤には固有の蒸発速度があります。
酢酸ブチルという溶剤の蒸発速度を100と規定し、それに対して数字が大きいと蒸発が早い、数字が小さいと蒸発が遅い、というように表します。
例えば、トルエンの蒸発速度は195、アセトンは720になります。


ですので、前置きが長くなりましたが、このお客さんのゆず肌トラブルの発生原因は、塗装の現場の温度が高いのに蒸発の早い冬用のシンナーを使っていたために、塗料が完全に平滑にならないまま乾燥・硬化し、ゆず肌になっていたというわけです。

このお客さんの場合、冬用のシンナーの方が蒸発が早いため塗装作業が早く終わるので、現場の作業員が、夏でも冬用シンナーを好んでずっと使っていた、という事情がありました。


たかがシンナー、されどシンナーです。
塗装の品質にも大きく影響しますので、シンナーは季節や現場の環境を考慮して、適切なものを選んで使ってくださいね。



脱脂の重要性についてのコラムは、こちら

塗料の粘度についてのコラムは、こちら

塗装後の乾燥時間についてのコラムは、こちら



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