中国の名経営者4:雷軍

日本と同じように、中国にも名経営者がいます。

日本では戦後から高度成長期にかけて、松下幸之助や本田宗一郎といった伝説的な経営者がいました。
しかし近年では、彼らほどのスケール感を持った経営者は、ほとんどいないと言っていいと思います。

しかし中国では、経済開放から40年もたっておらず、一代で巨大な企業を作り上げた創業者達が、いまだに現役で活躍しています。
中国駐在員の方にぜひ覚えて頂きたい、中国の伝説的な起業家、名経営者を紹介していきたいと思います。


▼中国のスティーブ・ジョブズ「雷軍」

2011年に突如スマートフォンを発表し、瞬く間に中国No.1シェアの座を獲得した「小米」。
小米のCEO雷軍は、中国のスティーブ・ジョブズと呼ばれています。
ただのパクリなのか、それとも本物なのか、雷軍の実像に迫ります。


雷軍は湖北省出身で、武漢大学コンピューター学部に入学します。
スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツなどのIT革命児たちの伝説に影響を受け、プログラムを書いたり、雑誌に投稿したりと、次第にコンピューターの世界にはまっていきます。

1991年、雷軍は大学卒業後、金山軟件(キングソフト)に入社し、漢字処理システム「WPS」の開発に携わります。
途中、ウインドウズ95への互換性対応が遅れ、市場シェアを大きく落とすなどの挫折もありました。

しかし、オンラインゲームの開発など、地道な努力で盛り返し、2005年にWPS Office 2005を発表します。
WPS Office 2005は、高度な互換性と軽快な動作で高い評価を得て、日本をはじめ海外にも進出する成功をおさめました。

2007年は、金山軟件は香港証券取引所に上場を果たすが、雷軍はこの成功に満足せず、金山軟件を退職し、独立の道へと進んでいきます。


そして2009年、雷軍はスマートフォン市場に打って出る決意をします。
「小米科技公司」の創業です。

まず雷軍は、アンドロイドOSを中国向けにカスタマイズした「MIUI」というOSを製品化し、これを無料配布します。
IT業界の有名人である雷軍が手掛けたOSということで注目を集め、さらにMIUIのファンコミュニティを構築して、ユーザーからの改善要求に答えていくことで、コアなファンを作っていきます。


そして2011年、満を持してスマートフォン「小米手機Mi1」を発売しました。
それは、学生時代からのアイドルであったスティーブ・ジョブズへの挑戦でもありました。

Mi1の発表会で雷軍は、タートルネックの黒いニットとジーンズというファッションで登場し、喋り方までスティーブ・ジョブズを真似るパフォーマンスをして、話題性を作ろうとします。
この狙いは的中し、中国だけでなく海外でも注目を集めることになりました。

小米手機は、MIUIを搭載し、クアルコムの半導体システムや、シャープの液晶などを搭載したハイスペック機種です。
しかし価格は、1,999元(約25,000円)という他社の半額ほどの値段で販売しました。

雷軍は、ハードウェアで利益を稼ぐのではなく、iPhone同様に、アプリ、音楽ダウンロードなど小米のエコシステムにユーザーを囲い込むことで利益を得るという戦略を取ったのです。

販売方法も特殊です。
実店舗で対面販売するという手法は取らず、公式サイトでのネット通販のみです。
雷軍は絶対の自信を持って、この価格戦略、販売戦略を実行します。


雷軍の狙いどおり、Mi1は爆発的にヒットします。
予約開始から34時間で32万台の予約が集まり、いきなり品切れ。
その後も追加販売が発表されるたびに、すぐに品切れという事態が1年もの間続きました。

小米科技の快進撃はその後も続き、毎年発売される後継機はヒットし続けます。
2013年に発売された廉価版の紅米手機(RedMi)は799元(約1万円)という破格の安さで、ローエンド市場で圧倒的なシェアを獲得しました。
紅米手機は、2016年にシリーズ累計1億台を突破しています。

小米科技はスマートフォン以降様々な関連製品を発売していきます。
タブレット、スマートテレビ、ルーター、空気清浄器、炊飯器、電動自転車、自撮り棒・・・などなど

小米科技が培ってきた地道なファン作りが功を奏し、小米ブランドの製品なら何でも買いたいというコアなファンが、小米の公式サイトからこれらの関連製品を購入します。

ソフトウェアの面では、アプリ以外にも、動画配信サイトや映像コンテンツ制作スタジオに投資するなど、コンテンツの充実を図っています。

また、近年IOTへも注力しています。
空気清浄器、炊飯器といった小米製品は、すべてスマホで操作できる設計になっており、将来的にすべてのハードウェアをスマホで操作できるようにしていく構想です。
(高口康太:現代中国経営者列伝より)


小米科技は、2015年にスマホ市場シェアトップになりましたが、安泰ではありません。
近年ライバルとの争いが激化し、あっという間にシェアNo.1の座をあけ渡しています。

性能面では、小米のコンセプトが模倣され、他社との差がなくなってきていますし、技術に定評のある華為、全国に販売店をもつOPPO、VIVOの販売力にも押されています。
小米科技が、その独自のエコシステムでユーザーを囲い込み、高いシェアを維持し続けられるか、今後の戦いが非常に見ものです。


雷軍はエンジェル投資家としても有名です。
エンジェル投資家とは、起業して間もない企業に投資する個人投資家のことを言います。
雷軍は、中国のIT業界で長年培った人間関係を活用し、これまで様々な企業に投資してきました。

代表的な投資としては、2000年に卓越網というウェブサイトへの投資があります。
卓越網は書籍やCDを売る物販サイトとして成功し、B2CのECサイトでNo.2のシェアを得るに至りました。
2004年にアマゾンが卓越網を買収し、雷軍は大きな売却益を得ています。

雷軍は、その多才な能力を生かし、今後も中国のIT業界をリードする存在であり続けるでしょう。



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