アドラーとおじさんの武勇伝~嫌われる勇気を持つおじさん達

最近、武勇伝を語るおじさんに出会いました。
取引先の営業の方なんですが、Tomoはこれまでも自分語りが好きなおじさんに何人か出会っていて、
そういえば共通項が多いよなぁって思ったんですね。

みんな40代以上で、よくしゃべるエネルギッシュな人で、そしてみんなメタボ体型。

なんでだろう?


自分のことを考えてみると、
Tomoは過去の成功体験なんて、自信満々に人に語るほどのものではないと思っているし、
昔よりも今の方がもっとハードルの高い仕事にトライしていて、今が必死。
過去を語っている余裕がない。

今を精いっぱいに生きるというか、今が必死で過去を振り返っている余裕がない人もいれば、過去にとらわれて、今を生きることに制限をかけている人もいる。

そして、その過去のとらわれ方にも2通りあって、
かたや過去の経験をトラウマにしている人もいれば、
過去の経験を武勇伝として語る人もいる。



トラウマについて語っている有名な心理学者がいます。アルフレッド・アドラーです。
アドラーが「トラウマは存在しない」と言います。

アドラーは「人間はみな、何かしらの“目的”があって、今の状況を作りだしている」という「目的論」という考え方を唱えました。

何かミスした時、例えば寝坊して会社に遅刻してしまって同僚に言い訳する一言、
「またやっちゃったー。オレ低血圧だから朝起きるのつらいんだよね。」
こいった私たちが頻繁に使っている思考パターンは「原因論」といいます。

でも本当はそうでなない。
「朝起きるのつらい」は自分の意志ひとつで変えられる、とアドラーは言うんですね。


この原因論の思考パターンである「低血圧だから朝起きるのつらい」というのを、
「中学生の時いじめられた経験があるから、人とのコミュニケーションを取るのが下手」に置き換えると、
中学生の時いじめられた経験というのは、いわゆる「トラウマ」として一般的に理解されます。

しかし、アドラーは次のように言います。
過去の出来事と今の状況に関連性はなく、「今の自分を正当化するために過去の出来事を取り上げて理由づけしている」というのが正しい。
だからトラウマがあるから今うまくいっていないのではなく、過去の事実の負の局面を切り取って、それをうまくいかない理由にしている。


アドラーは、「過去は変えられないが、未来は変えられるのだから、今日から自分を変えようと決意することが第一歩」だと言います。

『自分を変えること=新たな目的をつくること』
この一歩を踏み出せば、過去の事実自体は変わらないが、その解釈を変えることができる。

目的論的に考えれば、トラウマの思考パターンは存在しなくなる、というわけですね。



この「トラウマは存在しない」を、武勇伝を語る人にあてはめるとどうでしょう。
一見武勇伝を語る人には、今の自分を語っていないように見えますが、
「過去の自分はこんなにすごい、だから今でも俺はすごい」ということを言いたいんですね。

今うまくいっていない自分をきっちりダメだと評価し、それをトラウマで理由づけするのではなく、
今うまくいっていない自分にきっちりと向き合わず、それでも俺はすごいと過去の武勇伝で正当化する。

武勇伝はトラウマよりもっとこじらせていますねw


過去の事実の陽の部分だけ切り取って、あるいは他人の協力なしには成し得なかった成果をすべて自分の手柄だと事実をねじ曲げて、昔輝いていた自分像を作り上げる。
これが過去の栄光とか、自分語りとか、武勇伝を語るおじさんの真の姿です。

武勇伝を語る大人は40代以上のおじさんが多いように思うんですが、
40代っていうのは、会社の中での出世競争で同期との差がついてくる頃なんですよね。
自己評価が高い人ほど、「なぜ俺は会社から評価されないんだ」と自分の中で激しい葛藤が起こる。

しかし、40年間積み上げてきた自分の仕事面や生活面のスタイル、心地よい環境、そして価値観や自尊心といったものを今から変えることができない。
だから変えられない自分を正当化するしかない。
だから過去の栄光をひっぱり出してきて、自分よりも経験値の低い若者に自慢げに語って、「すごいですね」と言ってもらってその場の自己満足に浸る。



悲しいですね、悲しすぎますね。。


ここでも「目的論」の考え方は、おじさんの心の葛藤をうまく説明していると思います。

過去の自分の体験はどう解釈しようが個人の勝手ですが、
過去を語るんじゃなくて目の前の仕事に必死に取り組みたい、そして未来について熱く語りたい。
Tomoはそう思います。

中国駐在、加油!



アドラー心理学についてのコラムは、こちら

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